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破壊される世界の森林─奇妙なほど戦争に似ている 
デリック・ジェンセン/ジョージ・ドラファン著、戸田清 訳、明石書店刊 から抜粋

‥‥産業主義(資本主義であれ、社会主義であれ)は、安価で従順な労働力、原材料の継続的注入、見境のない消費者からなり絶えず拡大する市場を必要とする。このシステムは寄生的であるので、その本性からして、継続的な補助金と、さらに多くの顧客の獲得を必要とする。したがって「グローバル化」とは、このような寄生的で、貨幣的で、商品駆動的で、不公平で、モノカルチャー的な社会経済システムが帝国の中心から周縁へと拡大するシステムのことなのである。

グローバルな森林破壊の物語は数多くあり、日本と東南アジアの森林に関わる物語はそのひとつだ。世代にわたる東南アジアの森林破壊において主要な駆動力となったのは、日本の貿易会社(英語になった「ソウゴウショウシヤ」=総合商社)であった。貿易会社のなかで最大級のものは、三菱、三井、伊藤忠、住友、丸紅、日商岩井であるが、他にもたくさんの会社がある。総合商社は、供給者、調達者、顧客から成る巨大なネットワーク(たとえば伊藤忠には800の関連会社と支社がある)であり、合わせると日本の輸入の44%、輸出の30%、国内総生産(GDP) の25%を占める。こうした貿易会社は資金、市場情報、技術、専門知識を提供し、生産、輸送、供給の契約の手配を行う。木材と紙の場合には、貿易会社は資金を提供し、伐採業者、輸送業者、輸出業者、合板製造・卸売・小売業者、顧客となる建設会社のあいだの契約を推進する。日本の貿易会社は、最大利潤を求めないという点で、伝統的な西洋の会社と違っている。その代わりに、その利潤は大量取引に基礎をおいている。日本の貿易会社は収入として低い料金を受け入れ、安い木材のための信用と機材を提供することによってビジネスを継続し、需要を刺激するために取り引きの連鎖を支配し、課税を回避するために移転価格操作などの手法を用いるのである。その結果、低価格のパルプ、紙、木材、合板が大量に供給される。貿易会社は東南アジアの森林を総なめにし、行く先々で熱帯林を激減させた。フィリピンでは1950年代から1960年代、マレーシアとインドネシアでは1970年代から1980年代、それからパプアニューギニアとソロモン諸島といった具合である。

熱帯林に対する日本の貿易会社の襲撃は、米国の木材産業について議論した際に述べたパトロン=クライアント関係の地元版が促進してきた。インドネシアのスハルト大統領のようなパトロンは、安全保障、国家資源、ライセンス、木材伐採権といったものを政治、官僚、軍事、実業におけるクライアントに提供し、クライアントは見返りにスハルトとその仲間に政治的支援、政治献金、正当性、安定性を提供してきた。スハルトのクライアントのひとりであったボブ・ハッサンは、インドネシアの合板取引を支配していた。スハルトの主要閣僚であったタイプ・マームードとラーマン・ヤークブはほぼ100万エーカー[約40万ヘクタール]を支配しており、これはサラワクの森林の3分の1に相当する。スハルトのおかげで金持ちになり、保護されたその他のクライアントには、世界最大の紙パルプ工場の所有者たちが含まれるが、彼らはインドネシアの熱帯雨林を何百万エーカーも破壊して、日本と米国の消費者に安価なコピー用紙を供給した。

アジアの熱帯林を破壊した伐採事業と合板および製紙工場の多くは、日本の銀行や政府機関から資金を提供されていた。借りた諸国は伐採からの収益によってのみ融資額を返済することができるが、会社によって設定される伐採量あたりの価格や、伐採業者やバイヤーに木材税や料金を回避させる腐敗の横行は、返済のためにますます多くの森林が伐採されねばならないことを意味した。諸国は事業を拡大するためにさらなる債務を負った。日本は世界における「海外援助」(ODA)の最大の供与国であり、あらゆる地域開発銀行を合わせたよりも巨額の貸し付けをしていた。日本の「環境」援助はさらなる融資であることが判明しているが、これは残っている森林の伐採のための目録を作る目的で、そしてさらなる繊維生産のためにマツやユーカリのプランテーションで植林する目的で使われた。

パトロンとクライアントの関係は不平等な力をもつ者のあいだに存在するので、当然不安定なものである。パラノイア、猪疑心、汚職暴露の可能性、恩顧を受けられなくなることへの恐れが付きまとっている。もちろんエリートの賛沢なライフスタイルと民衆の貧困はルサンチマン[恨み]に火を付ける。だから不可避的にスハルトとその取り巻きは失脚した。残念ながら、スハルトの失脚は収奪と森林破壊を止めはしなかった。このときまでに、インドネシアは世界銀行やアジア開発銀行のような銀行や国際金融機関への巨額の国家債務を計上していた。この金の多くは森林を伐採したり、鉱物を採掘したりする──要するにインドネシアの資源を吸い上げる──多国籍企業のために必要なインフラの建設に使われていた。そしてインドネシアに残されたのは──われわれはこのパターンを世界中で目撃しているのであるが──荒廃した景観と巨額の債務である。樹木と現金の両方がドアから流出したのだ。帝国の中心部にいる者たちは、債務を利用してさらなる森林破壊を強制する。もしお前の手元に現金がないのなら、親切なわれわれが樹木を取ってあげよう。ところで、どうしてお前たちはそんなにたくさんの金を学校、病院、環境修復に浪費しているのだね? これは要するに便利な悪徳商法で、高利貸しを悪い言葉で言い換えたものである。独裁者スハルトは失脚したが、国際金融機関の独裁は貧困層から資源を奪い続けている。

同様な構造と過程がアフリカでも起こっており、英国、フランス、ベルギーのような旧宗主国が旧植民地の森林の資源を吸い上げ続けている。そしてこうした国々が輸入する熱帯木材の半分ないしそれ以上は違法伐採されたものである。

同じことは今日のブラジルでも起こっている。ご承知のように、ブラジルはヨーロッパ人に征服された。殺害、病気、強制労働によって森林居住民の人口は激減し、森林に残った人びとは小作人になった。彼らは収奪されたのである。現在も収奪は続いている。‥‥

‥‥消費社会のエリートたち(すなわち、米国、欧州、日本の中産階級と上層階級であり、ある程度は他のあらゆる国の上層階級である)のあいだには、賀沢品、必需品、木材・紙製品を含む生活用品に対する飽くなき需要がある。有限の地球の上で無限の需要を満たそうとすることに伴う問題点は、読者の皆さんにもわかるだろう。

北のエリートの支配者やビジネスマンたちは、債務返済計画、賄賂、武器取引、その他の非倫理的で違法な方法を用いて南のエリートと共謀し、多国籍企業に民衆の土地へのアクセスを与え、企業が暴れ回る──縮まりゆく森林を伐採する、汚染と浪費をもたらす機能不全の工業技術を使う、森林をうまくいかないプランテーションで置き換えるなど──ことができるようにする(あるいは奨励する)。

北で権力を握る者の観点からみると、南のエリートが賀沢のおこぼれに誘惑されず、資源の巨大な流れを提供しないのなら、パネルや紙のダンピングでもって、途上国の国産の合板や紙の製造施設を駆逐できるだろう。もしそれがうまくいかないなら、世界貿易機関(WTO)の裁定を利用して、国際的な貿易規制についての何らかの想像上のあるいは取るに足りない違反を理由に経済制裁の脅しをかけることもできる。もしそれもうまくいかないなら、食料輸入の禁止を宣言できる。そしてもちろん水平線の向こうにはいつも砲艦が待ち構えている‥‥。

いずれも古きよき植民地主義の例で、私の手元にある『ウェブスター英語辞典』は「植民地主義」を「(a)ひとつの国家権力による従属的な地域や人民に対する統制、(b)そうした統制を唱道し、あるいはそれに基礎をおく政策」と定義している。世界の豊かな国々がいまなお植民地を統制しており──それらを「植民地」と呼ぶほど正直あるいは無神経な人はほとんどいないが──それは植民地構造の多くが国家の「独立」の後も残っているからに過ぎないということは、偶然の一致ではない。土地、資源、市場への企業のアクセス。債務を抱えた日雇い労働者。権力者に有利な租税構造。小規模生産者を土地から追い出すことを目的とする商品価格の決定。資源の大量輸出。こうしたものが500年前と同じ形で残っている。こうしたメカニズムを記述する名称──そして権力をもっ者の名称──だけが変わった。いくつかの途上国では、貧困は直接に植民地支配されていたときよりも、はるかに悪化している。残っている森林もずたずたになっている。

現実世界からの声、立ち退きさせられたブラジルの小農民ラザロ・コレイア・ダ・シルヴァの言葉に耳を傾けよう。「いまでは私は辺獄に、世界の果てにいるようなものだ。私は土地を失った。いまでは牧場で働かなければならない。私は働いているのに、やつらは払わない。それにここには警察がいる。警察に行って牧場から給料を払ってもらおうとすると、刑務所にぶち込まれる。何をしたらいいのかわからない」

グローバル化の金融、法、政治的な構造とメカニズムは複雑な編み目に織り込まれており、それを政治的経済的エリートの利益のために、金融と技術の専門家が操作している。この網の目は実際に土台にある基礎──警察と軍事力──をたいてい暖昧にしている。私たちはこうした構造やメカニズムの教科書的な定義をすることはできるが、教科書はたいていその同じ専門家によって書かれており、定義はしばしば実際に起こっていることを隠している。つまり、人びとが共有の富を奪われ、共有の富がエリートの賀沢品を作るために浪費用の品に転化されるといったことである。‥‥

‥‥現実世界からのもうひとつの声、今度はマレーシアのサラワク州パラムのウマ・パヤンのロングハウスから来た先住民カヤン人の言葉に耳を傾けたい。「会社に破壊されたわれわれの土地のことを考えるときには、体が本当に痛くなる。もう、ボートを作るための樹木を見つけることができない。残っている木材といえば川を流される丸太だけで、陸地には何も残っていない。やつらは、われわれの土地をブルドーザーで蹂躙し、いまでは砂と石しか残っていない。やつらならそんなことをしてもよいというのか? これはいったい何なのだ? これは俺の土地で、俺の果樹だ。しかしやつらは警察に俺を逮捕させようとする」‥‥

‥‥誰かが森林破壊に反対したときに、何が起こるかということの例をここに示そう。ラウル・サパトスはフィリピンに住んでいる。彼は環境自然資源省(DENR) の突撃部隊のチームリーダーで、木材資伐の阻止が仕事だった。驚くようなことではないがDENR は腐敗しており、それにもかかわらずラウルは廉潔だった。1989年に彼はトラックいっぱいの違法伐採木材を二回止めた。二回目のとき、その木材を友人の市長が使用するということがわかっていながら、押収物を返さなかった。1990年1月14日、ラウルが突撃部隊本部で仮眠をとっていると、市長、ボディガード、警察がライフルと手榴弾を持って襲撃してきた。ラウルはM16 銃で応戦し、市長を射殺してボディガードに怪我を負わせた。これによって彼は殺人と殺人未遂で有罪となり、終身刑を宣告された。‥‥

‥‥土地プログラムについて覚えておくべき重要なことは、政府が誰かに新しい土地を約束するときは、その土地を別の誰かから奪わなければならないということである。皆さんもおわかりのように、その「別の誰か」とはお金持ちではないだろう。また外国企業でもない。指導者のお友達でもない。たいていは先住民族だろう。率直に言えば、買い取りの申し出は毎度のように、代価を約束された貧しい人に対してではなく、仲間のエリートに対して支払うための口実である。

最も見えにくいメカニズムのひとつは、土地の私有権といったような財産法のそれである。土地の私有権というのは非常に奇妙な概念である。もし私が土地を持っていないとするなら、私は誰かにお金を払うことなしに地球上で眠る権利がない、ということなのである。私はただ生存するために地代を払う必要がある。財産法についての欧州の概念は、世界中に──ときには力の行使によって──広げられてきた。これらの概念を認識するのを拒んだ人びと──彼らはその代わりに、土地は生きているとか、土地は共有されているとか、売買できないとか、土地自体を含む地域社会全体の利益のために使われなければならない(そもそも「使われる」とすればだが)とか信じている──は、土地を没収された。抵抗した人びとは殺された。‥‥

‥‥ここに現実世界から採ったもうひとつの話がある。「チーク材は(ビルマ軍事政権の)SLORC[国家法秩序回復評議会]にとって、二番目に大きな合法の外貨獲得手段である。‥‥ビルマとタイの伐採業者は丸太を運ばせるのにゾウを使うが、この動物に大量のアンフェタミンを与えて依存症にさせるのである。チーク材をさらに急いで運ぶようにせき立てられるので、多くのゾウが過労で病気になって死んでしまう」

私たちがこれまで記述してきたグローバル化のプロセスは、ひとつながりの動機づけと行為として大まかに要約することができる。飽くなき消費が権力者をして、他国に侵略してその樹木を盗むようにし向ける。これが森林の農地への転換をもたらし、森林に住んでいた人びとは農民か工場労働者になることを強いられる。これが貧困をもたらし、難民は食糧と燃料を求めて、後退していく未開拓林に入り込む。これらすべてが対外債務をもたらすが、それがアグリビジネスと原材料輸出を促進し、さらなる債務と貧困の増大につながっていく。これが最終的に国内経済の崩壊、構造調整、悪循環の加速へとつながっていく。‥‥

‥‥他方、世界銀行と多国籍開発銀行は、税金の限りない流入を受けて、その金で破壊的で不必要な伐採事業に融資する。地元住民が外国企業の侵略に反撃すると、米国国務省の海外民間投資公社は、政府が保証する政治的リスク保険を提供する。ロシアにおける製材所をインターナショナル・ペーパー社が買収したときのように。

ゲームは粉飾されている。しかしこれはゲームではない。
あるいはむしろ「勝ち組」のためのゲームに過ぎない。「負け組」にとっては貧困と破壊、生と死である。

パプアニューギニアからの声を紹介しよう。「お前たち白人は、お前たちの家を建てるために用材を使う。われわれニューギニア人は床張りのためにブラック・パームの木を使う。われわれは釘の代わりにフジを使う。われわれは屋根を作るために鉄の代わりにクナイを使う。会社の機械はわれわれのブラック・パーム、われわれのフジを駄目にし、ブルドーザーはクナイの土地を踏みにじってきた。他の村と共同で行う行事に必要な伝統的な衣服を作るために使うマロウはなくなってしまった。機械はわれわれの土地とわれわれの伝統を台無しにした。金で補償することはできない」

多国籍企業は世界を食い尽くしていく。金持ちの道具である彼らの強さのひとつは、彼らが遠くにいて、非常に効果的に殺すことである。儲ける連中は、自分たちが引き起こす荒廃を一切見ずに済む。彼らの強さのもうひとつは、彼らが法的虚構であるがゆえに実際には存在せず、決して殺せないことである。さらに悪いことに、彼らは身体を持たないので──むしろ貧欲さの「化身」であるので、そしてわれわれの文化の他の部分と同様に、あらゆる愚かで常軌を逸して殺人的で自殺的な理由から、自分たち自身を取り囲む世界から分離しようとするので──成長を止める必要が決してないのである。

だから森林が小さくなるにつれて、企業は巨大になる。われわれの生活と地域経済は、これらのますます大きくなり、ますます遠方へ行き、ますます専制的になる虚構的実体によってますます支配されるようになる。

そして彼らは世界を食い尽くしていく。
すべてが非常に奇妙で、非常に悲しく、非常に愚かだ。

多国籍企業とこれを経営する者たちは、どこにも忠誠を誓う場所がない。米国に本拠をおく企業が東南アジアの森林を破壊する。東南アジアに本拠をおく企業が南アメリカの森林を破壊する。欧州に本拠をおく企業がアフリカの森林を破壊する。終わりがない。

グローバル化の問題点は、抽象的な経済および政治の理論にもとづいているのではない。われわれは実際の企業と現実の森林について語っているのである。世界で最大の地主は、木材企業である。‥‥

‥‥マレーシアからの声を紹介しよう。61人のダヤク人指導者が署名した声明である。「われわれが自分たちの土地と森林から出て行くことに同意しないと、われわれが「開発」に反対しているのだと言う人たちがいる。これはわれわれの立場を完全に誤解している。開発とはわれわれの土地と森林を盗むことではない。‥‥これは開発ではなく、われわれの土地、われわれの権利、われわれの文化的アイデンティティを盗む所業である」

なぜ企業が決して成長をやめる必要がないかについて私たちが先に述べたことは、厳密に言えば真実ではない。彼らは世界を消費し尽くすまで成長をやめないだろう。そのときに成長をやめることは確かである。森林も成長をやめる。そして、私たちも成長をやめるのである。‥‥

‥‥米国国務省の海外民間投資公社と米国輸出入銀行は、ロシア、インドネシア、チリなど海外での森林破壊に資金を供与している。日本は世界中で、森林破壊と不毛なプランテーション [ユーカリ、アブラヤシなどのプランテーシヨンをさすのであろう] による天然林跡地利用のために補助金を出している。その地域は、ロシア、[自国の]沖縄、インドネシア、ブラジル、オーストラリア、ベトナムにわたっている。欧州諸国は、アフリカの消え残った熱帯雨林をむしばむような道路とダムの建設に資金を提供している。

木材会社による植林と環境モニタリングは、税金が伐採道路と木材輸出港湾の建設に、内戦で引き裂かれた地域での政治的にリスクがある伐採事業への保険に、紙産業を環境規制から免除させるために、森林を保護してきた地域社会にトラクターとパルプ製造機械を貸しつけるために、抵抗する者を攻撃したり殺したりする警察と軍隊を提供するために使われていることを考慮するならば、無意味である。‥‥

‥‥ここにアロン・セガ──リンパン貿易会社から賄賂を受け取ることを拒否したサラワク州ロング・アダンのプナン人の首長──が、自分の家族の墓地が破壊された後に語った言葉がある。「私は彼に言った。たとえ私が何らかの主張のために死ななければならないとしても、私の両親と親戚の肉体と魂を、自分を救うために差し出すことはしない。生きていようと死んでいようと私たちの肉体は売り物ではないのだから。私はお金を拒否して彼に訴えた。もしあなたたちがそんなにたくさんのお金を持っているのなら、どうかここに来たりせず私たちの土地を取り上げるのをやめてほしい。しかし彼は首を振り、笑って答えた。『私たちはこの土地で仕事をする許可をもらっているのだ。森林にはお前の土地なんかない。森林は政府のものだから。この金を受け取るか、すべてを失うかだ。』私はそれでもお金を拒否した」‥‥

‥‥何百万エーカーの商業林が現在、持続可能な形で管理されていると確認されているのは事実だ。大規模購入者と小売り業者は、森林から製材所、そして販売店までの加工・流通過程の情報を提供されている。3000万エーカー〔約1200万ヘクタール]以上が持続可能な森林経営を行うための認証を受け、5000万エーカー〔約2000万ヘクタール]が「少なくとも五年間にわたる正式かっ国家的に承認された森林経営」として認められている。残念ながら、5000万エーカーというのは世界の森林面積の6%に過ぎず、もちろんその森林計画の多くが実施されることはない。これらの認証された森林の90%は、米国、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、カナダ、ドイツ、ポーランドのような工業国に位置しており、発展途上国の森林と森林居住民は保護されないままになっている。

主要な認証プログラムのうち二つは、森林管埋協議会(FSC)と、全欧森林認証協議会(PEFCC) である。FSC は消費者にどの木材製品が「環境的に受容でき、社会的に有益で、経済的に持続可能な」森林からきているかを示すために、環境団体と伐採企業によって設立された。同協議会は、よい森林経営の諸原則と生態系ごとの判断基準を開発中である。しかしFSC は自分たちが認証している企業から金を受け取っているのである。その結果はどうだつたか。ブラジル、カナダ、インドネシア、アイルランド、マレーシア、タイにおけるFSC のプログラムに関する最近のある調査は、FSC が「地域住民の拷問と射殺などの著しい人権侵害に関与し、スマトラトラのような世界で最も絶滅の恐れがある野生生物のいくつかが生息する手つかずの熱帯雨林で伐採を行い、たとえば認証されない木材にFSC 認証の表示をするというように、FSC の監査条件に適合しているという虚偽の申告をしてきた」企業を認証したことを示している。

全欧森林認証協議会は、欧州の森林所有者と業界の代表によって設立された。フィンランドの森林の98%とノルウェーの森林の3分2は持続可能であると認証されたが、そのことは不毛な樹木プランテーシヨンを認証するために組織というものが存在していることを示しているに過ぎない。

ボイジ・カスケード社、ウェアハウザー社、リンブナン・ヒジャウ社、サムリン社やその他の悪名高い企業でさえ認証されるとしたら、認証にいったい何の意味があろうか? 加工・流通過程についての文書は、奴隷労働、木材の密輸、有毒物質汚染といったことに触れているだろうか?「フォレスト・エシックス」と「熱帯雨林行動ネットワーク」[いずれもNGO] は今後、密輸業者と虐殺者を地の果てまで追っていくべきであり(実際にすでにそうしているが)、木材販売店については、認証された木材製品を販売するようになるまでさらし物にしていかなければならない。しかし私たちが文化的見返りを求める現行の制度を維持している限り、公共的な資源を安売りしようとする政治家や、原生林を伐採しようとする業者や、加工・流通過程についての文書を改ざんしようとするコンサルタントや、そのために誰が殺されたかを顧みず一番安い商品を買おうとする消費者は、後を絶たないであろう。‥‥


私たち (人類) が世界の森林に対してなしていることは、私たちが自身に対して、お互いに対してなしていることの鏡に過ぎない。 マハトマ・ガンジー