第166回国会 予算委員会第三分科会 第1号(平成19年2月28日(水曜日))から

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本分科会は平成十九年二月二十六日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十七日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      遠藤 武彦君    大島 理森君

      倉田 雅年君    森  英介君

      岡田 克也君    丸谷 佳織君

二月二十七日

 森英介君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十九年二月二十八日(水曜日)

    午後三時開議

 出席分科員

   主査 森  英介君

      猪口 邦子君    遠藤 武彦君

      大島 理森君    倉田 雅年君

      矢野 隆司君    岡田 克也君

      鷲尾英一郎君    丸谷 佳織君

   兼務 高橋千鶴子君 兼務 保坂 展人君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   法務副大臣        水野 賢一君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   財務副大臣        田中 和徳君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   最高裁判所事務総局経理局長            小池  裕君

   最高裁判所事務総局刑事局長            小川 正持君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 梅溪 健児君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   池上 政幸君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 草賀 純男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 香川 俊介君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           原口 和夫君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局次長)           佐藤 和彦君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

   外務委員会専門員     前田 光政君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  遠藤 武彦君     矢野 隆司君

  大島 理森君     猪口 邦子君

  岡田 克也君     菊田真紀子君

  丸谷 佳織君     田端 正広君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     大島 理森君

  矢野 隆司君     遠藤 武彦君

  菊田真紀子君     鷲尾英一郎君

  田端 正広君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  鷲尾英一郎君     岡田 克也君

  古屋 範子君     田端 正広君

同日

 辞任         補欠選任

  田端 正広君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  古屋 範子君     丸谷 佳織君

同日

 第二分科員保坂展人君及び第四分科員高橋千鶴子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算

 (法務省、外務省及び財務省所管)



     ――――◇―――――

〜前略〜

高橋分科員 私も、〇四年に農林水産委員会の視察でケアンズ・グループを訪問しようということになりまして、オーストラリアやニュージーランド、タイなどを訪問する機会を得ました。オーストラリアは、国土は日本の二十倍、人口は七分の一という状況で、まさにあり余る資源がある中で、食料自給率が二三〇%、だから、食料を輸出したい、どんどん拡大したいと思うのは当然のことなんだろうなと思ったわけです。

 そして同時に、では日本はどうかというと、自給率が四割、国民の食料を四割しか賄えないような状態で、また、資源を持たない、その国がやはり対等にテーブルに着くというのはかなり無謀なのではないか、こういう印象を持っているわけです。

 それで、日豪のEPAについては、衆参の農林水産委員会の決議もあり、松岡大臣が、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖など重要品目については除外または再協議の対象となるよう交渉すると主張されてきたと思います。ただ、これらの品目は、オーストラリアにとっても大変関心の高い品目として一致していると思うんですね。特に砂糖などはアメリカとのEPAでは除外された、そういうふうないろいろな問題があって、これらを抜きにした交渉は考えにくいとなってしまうのではないかなという危惧がございますけれども、その点、いかがでしょうか。農水省に。

原口政府参考人 お答え申し上げます。

 豪州から輸入されます農産物の多くは、我が国農業にとって重要な品目であります。したがいまして、仮に日豪EPAによりこれらの品目が関税撤廃されるということになれば、我が国の農業に大きな影響が及ぶと認識してございます。

 日豪EPAにおきましては、政府間共同研究の報告書がまとめられております。その中で、EPA交渉が開始されれば、段階的削減のみならず、除外及び再協議を含むすべての柔軟性の選択肢を用いられ得るという枠組みが取りまとめられたところであります。

 豪州との交渉に当たりましては、これを土台として、国内農業への影響を十分踏まえ、守るべきものはしっかりと守るという方針のもとに取り組んでまいりたいというふうに考えております。

高橋分科員 今の表現は、柔軟な対応ということがよく言われているんですけれども、いわゆる日本側が今言っている除外だとかそういうことも含めて、一定の合意が得られているという意味でしょうか。

原口政府参考人 EPAの交渉においてどのような措置を講ずるかという選択肢の中に、段階的削減だけではなくて、まさにその除外なり再協議というものが選択肢としてあるというふうに理解しております。

高橋分科員 ありがとうございます。これ以上は、交渉事だときっと言われるでしょうから。

 そこで、昨年十二月に出された日豪経済関係強化のための共同研究、この最終報告書がありますけれども、三十二パラグラフの中で、「EPA/FTAは、食料貿易の関係を強化することに寄与し、世界的に食料供給不足が生じた場合も含め、日本が食料安全保障の目的を実現することに資する。」と書き込まれております。

 これは、今後地球温暖化など、世界的な食料危機が叫ばれる中で、オーストラリアが日本の食料安定供給を保障するという意味だろうか。非常に考えにくい提案ですけれども、伺いたいと思います。

原口政府参考人 国民に対する食料の安定的な供給、これにつきましては、国内生産の増大を図るということを基本にいたしまして、これに輸入と備蓄を適切に組み合わせるということが重要であるというふうに考えてございます。

 このような観点から、共同研究におきましては、食料供給に関する日豪間の関係を強化し、その安定性と信頼性を高める措置といたしまして、例えば我が国への農産物の輸出を禁止または制限するような措置をとらないとか、輸出税の禁止などを検討することが有益であるというふうにその報告書の中で結論づけられたところでございます。

 今後の交渉におきましては、こういう共同研究の成果というものを十分活用いたしまして、我が国の国内農業への影響なり食料供給への影響というものを十分踏まえて検討していきたいというふうに考えております。

高橋分科員 これはかなり思い切った表現だと思うんですね。過去にこういうことがあったのかということもあわせて聞きたいんですけれども、オーストラリアは国土の大部分が砂漠の国であり、干ばつに悩まされてきた国でもあります。年間降雨量六百ミリメートル以下の地域が国土面積の八割を占める、五割の地域が三百ミリ以下と聞いております。やはり安定的ではないということが特にあると思うんですね。

 そうすると、例えば二〇〇〇年以降で、米が最大とれた年は何年で、幾らだったか。それに対して、最少だった年は何年で、幾らか。これをちょっと示していただきたい。それで一体、水の問題とか、あるいは不作のときとか、それも含めて食料を確保する、そこまで踏み込んでいるんだろうか、伺いたいと思います。

佐藤政府参考人 オーストラリアにおきます米の生産量のお問い合わせでございます。

 私どもの持っております統計データによれば、二〇〇〇年以降で一番米がとれた年、百二十六万トン、これは二〇〇〇年四月から二〇〇一年三月までの穀物年度でございます。それから、最も少なかった年、二十三万トン、これは二〇〇四年、二〇〇五年にまたがります穀物年度で二十三万トンという数字がございます。

 なお、今シーズンでございます。これはまだ収穫が始まった時期だというふうに承知しておりますけれども、現時点の見込みといたしまして九万トン、前年度比約九割減、深刻な干ばつの影響であるというふうに言われているところでございます。

高橋分科員 今年度の見込みが九万トン、二〇〇〇年が百二十六万トンということで、大変に振り幅が大きいわけですよね。これは小麦についても同じようなデータがあるかと思います。そういう中で、安定供給を約束するというのはやはり言い過ぎだろうと思うんですね。

 では、それは供給できないときはよそから持ってきてでも供給すると言っているのか、そういうことになるかと思うんですよね。どうなんでしょうか。

原口政府参考人 農産物の貿易につきましては、基本的には民間取引も多うございまして、食料の安定供給としてどのような措置がとれるかということは、まさに今後交渉の中で検討していくことだと思っております。

 ただ、報告書の中でありましたように、その措置としましては、先ほど申しましたように、例えば豪州側が輸出制限的な措置をとらないとか、あと、例えば供給不足時にあらかじめ連絡調整なり協議の仕組みを設けるとかいうようなことは考えられるのではないかということで、共同研究報告書の中でこの食料の安定供給について一項を設けて記載しているところでございます。

高橋分科員 この点は、やはり納得のいく答えは得られないと思うんですね。

 いろいろなお話を伺う中で、例えば水を輸入するんじゃないかとか、海の水を使うんじゃないかとか、あるいはいざというときはよそから輸入するんじゃないかとか、いろいろなことが言われているわけですけれども、あるいはオーストラリアで足りない場合は、その後に控えている日中、日米、そういう関係もあるのかなと。いずれにしても、私は、こうした記述が盛り込まれたことは、やはり外国頼みの食料安保という新たな段階に日本が移行するのではないかと非常に強い危惧を持たざるを得ない。これは指摘にとどめたいと思います。

 そこで、農水省が二十六日に出した影響試算の資料の中に、こういう記述があります。「意欲ある農業者や優良な農地等の生産資源が現に存在し、国内で十分に農業生産を行えるにもかかわらず、それを放棄し、あえて特定の農産物輸出国に国民の食料の大半を委ねている国はない。」この認識は非常に重要であり、私も共感できます。あえてこうした書き込みをした農水省の決意を伺いたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、国民へ食料を安定的に供給するというのは、国の重要な責務と考えております。その場合は、当然国内の生産を基本とし、それに輸入と備蓄を組み合わせていくという基本的な考え方で行っているところから、今委員が言及されました記述については、その考え方から当然出てくることでございます。

高橋分科員 ぜひその立場を堅持していただきたいと思うんですね。

 では、構造改革を進めて、農水省の言う意欲と能力のある担い手に七割から八割の土地を集中する、支援策も集中するということをやっていくとしたとして、農水省が描く農業構造というのが、いわゆる完全自由化と見合うのだろうか。関税撤廃されてもやっていける、国際競争力のある農家とは、一体どういう農家なんだろう。具体的に、米の値段がどこまで下がれば実際勝っていけるのか、あるいは農地がどのくらい集積すればできるのか。これは具体的に描くことができますか。

内藤政府参考人 二十六日の資料でも私ども示しておりますけれども、私ども、現在、農業生産コストの大幅な低減を目指しまして、担い手の規模拡大などの施策を重点的に推進しているところでございます。こうした施策によりまして、経営展望で示されました経営規模を実現し、稲作の生産コストを低減していく、大体現在の約六割、六十キログラム当たり大体一万一千円という水準にまで引き下げたとしても、米国等諸外国の生産コストと比べれば、依然として大きな格差があるというふうに考えております。

    〔主査退席、倉田主査代理着席〕

高橋分科員 依然として大きな格差があるので、国境措置がない中では、やはり国際競争力というのはあり得ないだろうということではないのかなと思いました。

 私は、やはり基本的に、世界の貿易が完全自由化という方向に進もうとするのであれば、幾ら構造改革を進めても、あるいはスピードアップしたとしても、やはり農業壊滅への通過点にすぎないのではないか、このように思っております。

 〇六年十一月二日の第二十四回経済財政諮問会議では、伊藤隆敏会長より、岩盤のように非常に改革がおくれている分野として、二年間でEPAの締約国を三倍にするべきだなどと強力に求められた経緯がございます。そして、この場で松岡大臣は、農水省としても、国境措置に頼らない、補助金に頼らない農業の確立を目指すことについては、基本的に全く同じ気持ちであると述べております。その中で、いろいろな議論がされるんですけれども、建設業者に入っていただいて、機械や組織を利用して農地を集約して農業をやってもらう、そして、どんどん推進役を果たして、画期的に変わった政策をやると述べていらっしゃいます。

 私は、この発言は、前段の発言とあわせて、オーストラリアのように農業が工業になる、アメリカのように家族経営が株式会社に変わる、そういう方向を農水省は目指しているのかなという印象を受けますが、いかがですか。

内藤政府参考人 私ども、今、担い手を育てるということで、担い手への施策の集中、重点化という施策を推進しているところでございます。しかしながら、担い手がいない地域もあるわけでございまして、そういう地域では、やはり担い手にかわる者として、企業の方に、例えば建設業とかそういった方に頑張っていただくということも必要と思っております。

 そういう意味で、私ども、リース方式というのを、特区から全国展開を今しておりますけれども、そういったリース方式を活用いたしまして、そういう企業が地域の農地を有効活用し、そして地域の雇用あるいは地域の農業の活性化に役立てていただけるのではないかという趣旨から、そういう施策の方向をとっているところでございます。

高橋分科員 今の御答弁は、ワーキンググループが進めている方向とはかなり遠慮がちな、それは既にリース方式に入っているわけですから、もうそういうレベルの話ではなくなっているわけです。これは、また別の機会に述べたいと思います。

 最後に、どうしても大臣に一言伺いたいと思っております。

 十一月のその会議で、御手洗経団連の会長がこういうふうに述べているんですね。本当の人、物、金がスムーズに動く状況をつくることは、理論的には国土面積がふえるのと同じ効果がある。まさに、目指しているグローバル経済というのはそういうことなのかなと思っておりますけれども、そういうときに、農業はかたい岩盤だと言われているわけで、本間副会長などは、食料の安全保障を確保するために国内生産に頼ることがベストではないというふうにまで述べております。つまり、外国に国民の食料をゆだねて、安定供給を図れればそれでもよしとする議論が一方ではある。

 私は、そこまでいってしまうとやはり主権の問題ではないかと思うんですね。最後に、食料主権をどう考えているのか、麻生大臣にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 高橋先生は青森県なので、そういったことにお詳しいのだと存じますけれども、基本的には私はこんなぐあいに、農業にそんなに詳しいわけじゃないんですが、かたい岩盤というのは別に農業だけじゃないんですよ、はっきり言って。医療関係とか、いろいろやっていましたからわかりますけれども、かたい岩盤というのはほかにもある。

 そういう中にあって、農業の場合を例に引きますと、日本の米というのは実は、ちょっとつまらない例で恐縮ですけれども、今、すしがはやりましたでしょう。すしというのは、一回炊いた米を酢をかけて冷やすわけです。酢をかけて冷やした米を食べたこと、外米でやったことがあるかというと、多分おありにならぬと思うんですけれども、私、海外に住んでいましたのでやったことがありますが、とてもまずくて食えるものではない。したがって、今、海外で食べられているすしの米は、あれは全部日本から持っていっているお米ですから。これだけ海外ですしがはやり始めると、あのお米は間違いなく海外で売られております。しかも、キロ千円で売られたり、ラスベガスなんかに行くと、キロ千六百円だとか千七百円で売られております。これが現実としてあります。

 そういった意味では、日本の場合は、今六十キロ標準米で一万四、五千円。だから、キロに換算すれば六十分の一ですから、それは日本の場合よりはるかに高く向こうで売れている現実というのを見ますと、やはり日本のものでも、いいものは高くても売れる。安全だから、うまいから、きれいだからというような部分ができ上がりつつあるというのは事実だと思っております。

 したがって、米というものの、何となく今ディフェンスばかりで主にできてきておりますけれども、そういったところも含めた上で考えないかぬというのが一点。

 もう一つは、後継者の話ですけれども、私のところにも農家がないわけじゃありませんので聞いてみますけれども、農家で後継ぎのあるところの共通点は一つです。みんなもうかっている農家です。もうかっている農家は後継ぎがいる、もうかっていない農家が後継ぎがいないというのが現実のように思いますので、どのようにすればもうかる農業になるのかという観点からこの問題は国内的には考えなければいかぬのではないか。

 ただし、基本として、食料というものは最も大事な、いわゆる戦略産業とも言えるべきものですから、こういったものはきちんと、この核の部分だけは守らねばいかぬという部分が必ずどこの国でもあるものだと思っております。

高橋分科員 残念ながら時間が参りました。いいものは高くても売れることにはもちろん賛成ですが、しかし、最後におっしゃった、守らなきゃならないものがあるんだということ、主権の問題なんだということをぜひ押さえていただきたいと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

倉田主査代理 これにて高橋千鶴子君の質疑は終了いたしました。

〜後略〜